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執筆者の写真koharubi

断熱UA値合戦…数値が良いほど良いお家なのか?

最近は夜の気温も夜風も大分涼しくなってきました。


夏の積乱雲が少なくなってきて、雲の膜が無くなる空。


夜の放射冷却も上手く作用しているのでしょう。


さて…最近断熱気密と世の中騒がしくなってまいりました。


先日、NHKでも特集があり、温熱環境の先生である東京大学の前先生と、日本の断熱先駆者、森みわさんが出演されてお話をしていました。


前先生が後日おっしゃられていましたが、スタッフの方々もとても熱意をもって特集を作られていたそうです。


それだけ世の中のトレンドに断熱がフォーカスされてきたという事。


私たち温熱性能を真剣にやってきた身からすると、何年も勉強してきて、「絶対にこの時代が来る」と言われ続け、ようやくその日が来たのかなとしみじみします。


このお二人をはじめ、先を走る技術者の方々のおかげです。本当に凄いです。


その中で最近業界では「UA値0.25!、HERT20G3を達成!」「標準UA値0.30!超高断熱」といったキャッチフレーズをよく目にします。


大体メーカーさんとか大手ビルダーなんですが、「UA値」と言う言葉が目につきますよね。


私のブログを読んでいる方は多分マニアックな方なので、UA値が何なのかはご存じだと思いますから細かい事は省きますが、簡単に言うと建物全体の室内熱が外に逃げていく量を数値化した指標です。

参照…国交省HP


数字が小さい程熱が逃げにくい…つまり魔法瓶のように断熱性能が高いという事。


今の国の基準だと我らが関東地方は、最低0.87W/㎡k以上にしましょう…くらいです。


これは大体、室温が真冬で13℃下回る性能くらいです。


現状は「UA値0.55w/㎡k」前後くらいが大体メーカーとか工務店の標準値ですかね。


このUA値、馴染みが最近出てきたこともあり、性能の良い数値だけが独り歩きして結果的に数値のみを切り取った「数値上げ合戦」が繰り広げられております。


我先にと数値を上げんとする戦いが勃発しています。


しかしながら…このUA値。

小さい程性能が良いのは確かですが、ただ扱い方を間違うと、とても暑くてとても寒い建築が出来上がります。


数値が良ければ"快適”とは限らない。という事。


では、それは何故か少しお話ししてみましょう。


例えば、Koharubi-lab.が設計した同じ条件の住宅で、ある検証をしてみます。

これは、断熱性能と光熱費、室温をまとめた表です。


今回は赤枠をご覧ください。


まず、UA値が0.30W/㎡K、室温は一日で一番寒いAM5:00の時に無暖房で17~18℃を保てる住宅です。外は-5℃くらい。


昼間は日射量も追加されてリビングは25℃位になっています。


これはしっかり太陽の日射を取り入れる事を考えた設計による「窓」の恩恵が大きいからです。


左の真っ青な方は最新の日本の断熱基準。まさかの室温10℃を切っておりますね…


まあこちらは置いといて。。


では次に、同じ性能でこの「窓」の恩恵が無い住宅…つまり窓の全くない住宅を仮定して検証すると…

ご覧の通り、UA値0.22W/㎡kと爆増しています。(本来窓の熱損失が大きいですがそれが無いため。)


巷でいう所の超高断熱です。「UA値0.22W/㎡k!」


ですが、注目すべき点は右の赤枠。お気づきかと思いますが、室温がUA値0.30の時より低いですね?


室温が先程と同条件で16~17℃です。


つまり、いくらUA値が高かろうが太陽の日射など熱源が無ければ暖かくなれないという事。


24時間エアコンを動かすなら別に良いと思いますが、暖房費も勿論上がります。

(これもUA値0.30の方が暖房費も安くなってますね。。)


窓は熱を大きく損失するものですが、同時に恩恵も大きい。


だからこそ、パッシブデザインがあるわけですね。


まずいのは、UA値ばかりに目が行って、"数値を上げるだけで暖かいお家になる"という思考。

そのために建築予算をかけること。


だがしかし、設計を誤れば室温も上がらず暖房費も上がる。


本末転倒です。。


UA値は0.1上げるために概ね¥100万位掛かりますし、室温1℃上げるのにも¥100万掛かります。


だとすれば、そのコストは窓の性能向上や家事の時短につながる工夫、良い給湯器に回しあらゆる効率を優先した方が良いと思います。


ちなみにこのUA値。


上の図を見て分かる通り「外壁・窓・屋根・床」の4つの熱の逃げを壁と屋根(天井)と床の面積で割って数値を出していますが、もう一つ温熱の基礎であるものが抜けている事にお気づきでしょうか…?


どの建築物でも考える「換気」


そう。UA値には換気の熱損失の要素が含まれていません。


つまり換気による熱の損失は考慮していないのです。


換気は、建築全体の熱損失の量を100%だとすると、およそ16%くらいは換気だけで熱を捨てています。(外気温2℃くらいの場合)


そう考えると、換気熱損失を考慮していないのに、高断熱ですと”言い切る"のはどうなのでしょうね。


国社数理の4科目テストで全教科90点を採っていれば合計360点。


ここに英を加えた5科目だとしたならば、英がたとえ0点でも平均点は360点ですよね?


つまり5科目評価だとしたら「換気は0点でも良い」と判断されているという事です。


そんな訳はありません。換気も熱損失が割と光熱費に直結するので無視出来ません。


ですが勿論、換気を考慮した値があります。それが、今は殆ど言わなくなった「Q値」です。


Q値は換気の損失も考慮した指標です。


この検証からみても、ただUA値が「高いだけ」では意味がありません。


ちゃんと、日照や通風・日射遮蔽も考えて窓や間取りも設計して、そしてUA値で魔法瓶を作る、この流れが自然では無いでしょうか?


ましてや間取りも窓も太陽に素直に設計すれば、窓からの日射熱は3600W近くいきます。


これは14畳エアコンの出力する熱量です。


これが電気代なくタダですから。


そうすることで、光熱費も抑えながら暖かく、CO2排出量も減らし、豊かな生活につながるのではないかと。


現状、どこもかしこもUA値を謳っているこの時代では、これを全面に出すしかありませんから、

仕方が無いかもしれません。


だからこそ、知識をしっかり身につけて見極めをしてほしいと思います。


デカデカと超高性能な数値を出している企業ほど、危ないかも…?


ただ時代に乗るために掲げている旗。大変な時代にもなったと感じています。


以上「数値が良いほど良いお家」とは一概に言いがたい、の正体でした。


ぼそぼそでした

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