構造計算にも質があるってホント?
- koharubi
- 5月16日
- 読了時間: 4分
更新日:5月17日
さて、4月になりようやく構造審査が義務化となりました。
「え?構造って第三者がちゃんと見て審査してくれていたんじゃないの?」
とんでもない…今までは特例で構造計算の審査はされておりました。
ですので、審査が無いからと構造計算をしない設計者も山ほどおりました。
ですが、今後はそうもいきません。
少なからず、構造の審査が入り第三者がしっかりみてくれます。
つまり構造計算は今後必須になります。
ただし、これは「仕様規定」という簡易な構造の計算となります。
ただ単に構造の法律に遵守してるかどうか簡単に確認する程度です。
もっと安全に構造を検討するとなると「許容応力度計算」が必要となります。
許容応力度計算をしていれば今までよりは、はるかに安全な建物となるでしょう。
しかし、許容応力度計算も慣れた人とこれからやる人とでは雲泥の差が出る事も事実。
「おや…構造計算って、数字が出てくるんだから、誰がやっても同じでしょ?」
そんな声をたまに耳にします。でも実はそれ、大きな誤解だったりします。
構造計算にもしっかり「質」があるんですね。
しかも、この「質の違い」が、建物の安全性や長寿命、そして将来のメンテナンスコストにまで影響を及ぼします。

1. 「法的にOK」と「本当に安心」は別物
日本では、2階建て木造住宅の多くが「四号特例」言わば省略の対象として、構造計算が省かれてきました。
でも、仮に構造計算をしたとしても、「確認申請を通すための最低限」と「設計者が責任を持って吟味した構造計算」では、中身の深さがまるで違います。
たとえば――
建物の重さの設定が甘い
風や地震に対するチェックが形式的
基礎と上部構造の整合が取れていない
地盤や地耐力を考慮していない
柱の配置が不適切
といったことは、実際によくあります。
さらには、構造材のたわみ設計もその一例。(たわみ設計とは梁などの木材の歪みの許容を設計すること)
構造計算にはたわみ(梁や床のたるみ)に対する基準があり、それを満たせば「合法」です。
ただしその基準は、快適性や仕上げ材への影響、物理的なたわみまで考慮するには少々甘めなんですよね。
例えば「1/150」というとりあえずの基準を満たしても、実際にはたわみが目に見えてしまったり、床鳴りの原因になることもあります。
ここも経験で、いくらにするかしっかり設定してあげる必要があります。
2. 「誰が」やるかで変わる構造の精度
構造計算ソフトは、どんどん便利になっています。でも、それをどう使うかは人次第。
料理に例えるなら、同じレシピでも、プロの料理人と初心者が作れば味が違うのと同じです。
適切なモデル化がされているか?
設計条件が妥当か?
計算結果をどう読み解いて判断するか?
スキップフロアの力の流れを理解しているか?
基礎のコンクリートの調合の設計は環境に合わせているか?
こうした“判断力”が試されるのが、特に基礎設計。
ソフトに数値を入れれば、一見立派な計算書が出てきます。
でも、構造の「力の流れと特性」を理解していないと、実際の力がどう伝わるかを見誤り、意味のない基礎計算になってしまうこともあるのです。
実際、申請審査は「入力さえ正しければ通ってしまう」のが現実。
表面的にクリアしただけでは安心とは言えないんですよね。
審査側は法律基準でしか審査しません。
一日に何社も膨大な量の審査をこなしている方々です。
基準を満たしていれば、それ以上余計なツッコミは入れない。
構造計算も「通せばいい」ではなく、「建てる人が安心できる」ことを目的にしています。
地盤や基礎の一体性を見直し
将来のリフォームに耐えうる構造計画
見えない部分まで設計者の責任を持つ
そうした姿勢が、「数字の裏にある質」なのです。
構造計算に“魂”を込める
数字は正直です。
でも、その数字をどう扱うかは人間の責任です。
「構造計算してます」と言っても、それが見積りの一行に収まるようなものであれば、その中身を確認してみる価値はあります。
安心して暮らせる家は、目に見えない構造から始まります。
こうしたレベルもずっと構造計算を当たり前にしてきた設計士と、最近始めた設計士では差が出ますよね。
だからこそ、住まい手の皆様が構造計算の重要性と、それにずっと通じてきた設計士なのかを見極める能力が今後必要となってくるのではないかと思います。
ただ、構造計算やってますよ。
だから、安全…
それだけでは安全は測れません。
解らなければ、構造計算書を第三者の構造設計者に見てもらうのも大事かもしれません。
それをやってる構造設計者もいますから。
ただのセカンドオピニオンです。
そう感じるここ最近。
ぼそぼそ