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その家は30年後誰が直すのか―型式住宅と「改修可能」という性能について

執筆者の写真: koharubi
koharubi
9月29日
読了時間: 8分

更新日:9月30日

長く続けていくこと…この慌ただしい世の変化に対応していくことは難しい。


皆さんは建物の性能というと、何を思い浮かべますか?


断熱性能、気密性能、耐震性能、省エネルギー性能。


最近ではUA値や耐震等級といった言葉も一般に知られるようになり、ハウスメーカーや工務店のホームページを見れば、さまざまな数値が並んでいますね。


もちろんこれらは大切な性能です。

が…住宅を30年、50年と住み続けるものとして考えたとき、もう一つ評価すべき性能があります。


それは、「その建物を将来誰でも直せるという性能」です。

皆さんは型式適合認定という合理的な仕組みをご存じでしょうか?


ハウスメーカー、特に工業化住宅を供給してきた企業では、商品や構法によって「型式適合認定」や「型式部材等製造者認証」といった制度が活用されています。


型式適合認定とはあらかじめ構造や防火など建築基準法上の一連の規定に適合する「型」をつくり、「型にはまったものしかつくらないよ」と宣言して国から認められて認定される制度です。


その「型」を使用する住宅は個々の建築確認の際に、認定された内容については毎回同じ適合の審査や法令確認を繰り返す必要がなくなります。


一定の範囲で確認や検査が合理化されるということです。

つまり時間のかかる建築確認申請も見るものが少ないため物凄く審査終了が早いわけですね。


まあ、1~10の審査プロセスがあるとしたら、1~8までは「型」にはまったものなので省略で、残りの9~10だけを審査すれば終わるという感じです。


部材を標準化し、工法を統一し、設計や施工方法を一定にする。

それによって品質の安定、生産性の向上、工期短縮、コスト低減などにつなげることができる。

これはハウスメーカーが持つ明確な強みの一つですし、新築住宅を大量に供給する仕組みとして見れば、とてもよくできた制度だと思っています。


すると、


同じ「建築確認」でも、審査のプロセスが同じではない


という事が起きます。


設計の仕事をしていると、建築確認申請について、

「知人が建てた大手ハウスメーカーは早かった」とか、「知り合いの家はもう着工しているのに、なぜこちらはまだ確認が下りないのか」といった話を聞くことがありますよね。


施主から見れば、どちらも同じ一戸建て…

ですから、単純に期間を比較したくなる気持ちもよく分かりますが、

この型式を知ると同じ条件で確認審査を受けているわけではない…という事になるわけです。


型式を活用した住宅では、認定された一連の規定について、個々の建築確認で改めて審査する必要がない…型にはめた量産ですからね。企画(規格)であるとはそういうこと。


一方、私たちのように敷地や施主ごとに一棟ずつ設計する住宅では、その建物について必要となる構造、防火、省エネルギー、敷地条件などを個別に図書化して確認を受けます。

特に2025年4月からは、木造2階以上について確認申請時に審査される範囲が広がりました。


同じ「住宅の建築確認」であっても、審査する内容やプロセスそのものが同一ではない。

という事実があります。


一般の建築主からは、この違いは見えません。

見えるのは「こちらは早かったとか遅かった」という結果だけ。


制度上の違いも、確認検査機関の混雑状況も、法改正による審査内容の変化も、設計者が自由にコントロールできるものではありません。


ただ、住宅を比較するときには、結果として何日掛かったかだけでなく、そもそもどのような制度と生産方式で住宅をつくっているのか。

そこまで含めて考える必要があります。


それで、ここからが本題。


住宅は完成して引き渡された瞬間に役割を終える「商品」ではありません。

「家族構成が変わる、設備が古くなる、間取りを変更したくなる、断熱性能を向上させたくなる、

外壁や屋根を更新する、相続される、中古住宅として別の人が住む…


単純に考えて住宅が長く存在すれば、いつか必ず何らかの修繕や改修が行われます。

マンションも同じですよね。


一般的な工法で建てられ、図面や構造計算書が残され、一般に流通する材料が使われている住宅であれば、設計した本人でなくても別の建築士や工務店が建物を読み解いていくことは比較的可能です。


ところがこのメーカー独自の型式、特殊な工法では全く事情が変わります。


柱、梁、壁、パネル、接合部などが、そのメーカー独自のシステムとして成立しているもの「型式」があるわけです。 (※当然例外のメーカーもあります。)


これが困るとこ。


第三者である建築士からすると、「この壁は撤去して本当に大丈夫なのか?」

「この部材は構造上どのような役割を負っている?」

「この接合部にはどの程度の強度があるのか?この開口を変更してよいのか…?外壁構成を変更して認定上問題ない?」といったことを確認しなければならないのです。


勿論、メーカーから必要な技術情報が提供され、新築時の資料も十分に残っていればよい…

ですが、それを確認できなければ簡単には分からないですよね。だから触れられません。

分からないものを、分かったつもりで改修することはできないからです。


もちろん、型式住宅だからリフォームできないという話ではありません。

問題になるのは、その境界。


一見すると単なる間仕切壁…でも本当に構造上何も負担していないものなのか。とか、

一般的な工法であれば、法令、告示、構造計算、既存図面などから第三者が判断できることでも、メーカー独自システムの場合には、そのメーカーが持っている技術情報が必要になる場合があります。


そこで情報が得られなければ、「できない」のではなく、「責任をもって大丈夫と言えない」ってことになるから厄介なんです。

地域の設計者としては、ここが非常に大きな違いです。


型式認定住宅は独自システムだから常識が通用しない。ブラックボックスすぎるんです…


それでも、

地域の設計者が「最後に触った人」になる。


既存住宅の相談を受けていると、

「メーカーに頼むと高いので、地場でお願いできないか」といった相談を受けることが当然あります。

所有者が価格や対応を比較して業者を選ぶのは当然です。


できることであれば、私たちも地域の住宅を直し使い続けることには協力したいですが、メーカー独自工法の住宅を第三者が改修するときには、どうしても慎重になります。


私たちは、その住宅の資料を探し現況を確認し、必要なら部分的に解体し、「ここまでならできる」と判断して改修することになります。


その後、何らかの不具合が起きたとします。


それが、新築時から存在した問題なのか。

メーカー独自工法に由来するものなのか。

今回の改修によるものなのか。

一般の所有者がその違いを判断することは簡単ではありません。


そして最終的には、

「でも、この家を最後に触ったのはあなたですよね」となる。


これは地域で既存住宅に向き合う側からすると、かなり怖い。

困っている人を何とかしたいと思って引き受けた結果、それまで自分たちが関与していなかった建物全体についてまで、事実上の説明責任を負うことになりかねないからです。


だから、型式みたいな「ブラックボックス」になっている建物ほど、慎重になります。


むしろ責任をもって仕事をしようとするほど、分からないものには簡単に手を出せなくなる…

これが現場の感覚です。


だから、


独自システムで大量に住宅を供給するなら、その後は誰が支えるのか


と考える…


私はここに、この数十年型式を利用し爆速で建てられた住宅ストックを考えるうえで大きな課題があると思っています。


この型式で合理的に作られた莫大なストックは30~50年と社会に残ったとき、その住宅の改修可能性について、誰が責任を持つのでしょう?


メーカー独自の閉じたシステムで住宅を大量に供給するのであれば、そのシステムで建てられた住宅が存在する期間、改修可能性についても何らかの責任や仕組みを持つ必要があるのではないか。


例えば…企業そのものの体制が変わっても、住宅を読み解くための情報が失われない仕組みをつくる。

本当に長期的な社会ストックとして考えるのであれば、こうしたことも必要になる時代が来ています。


何が話したいかというと…


最後まで面倒見ますって大手企業でも事業の形は変わる、ということ。


企業が市場環境に合わせて事業を再編すること自体は経営判断・方針として当然あり得ることですね。

ただ、住宅の寿命と、住宅会社の商品や事業戦略の寿命は同じではない。ということ。


今全国で型式の新築住宅を供給している企業が撤退し、

将来も同じ地域、同じ体制で新築住宅を供給しているとも限らないわけです…


だからこそ、住宅を企業の内部だけで完結する「型の商品」としてではなく、社会に長期間残る建築物として考える視点が必要なのだと思います。


国も現在、既存建築ストックを有効に活用していく方向を示していて、建築士が既存建物の法適合状況をどのように調査するかを示した「ガイドライン」も整備されました。


既存住宅を使い続ける社会にしていくのであれば、新築時の性能だけを評価していてよいのでしょうか…


現在の性能だけでなく、「誰が直せるのか。技術情報は残るのか。一般的な材料や技術で維持できるのか。設計した会社がなくなっても、第三者である建築士が建物を読み解けるのか」。


ということも、住宅を評価する一つの指標になってよいのではないか…

私はこれを「改修可能性という住宅性能」と考えています。


だから、できるだけ一般に入手できる材料や、"第三者が容易に理解できる工法"を使う。


そうして、自分がいなくなった後でも、別の建築士や地域の工務店がその家を読み解き、直すことができる状態にしておく…

それも住宅を「設計する人間の責任の一つ」です。


「誰が見ても直せる家」であることも、私は住宅の大切な性能だと思います。


合理性を追求した結果なのに、長い目で見ると合理的ではないんですよね。


これから本当に住宅ストックを活用していく社会になるのであれば、その視点は必須かと…


ありとあらゆることが、今転換期に来ている。

自然災害も、AIの進化も、事業の在り方や、ものづくりも。


と…事業撤退したとあるニュースを聞いて、モヤモヤをぼそりたくなりました。

 
 

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